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  • 2014.11.04 Tuesday
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復活祭 TDL編

 ども! TDLの演目解説です。
TDL 「落下箱」

根暗との唯一の共通作品。しかし、そのアプローチは根暗と全く真逆。根暗が杵渕作品に自分の要素を肉付けしていくというアプローチならば、TDLは作品を骨組みだけにして、それを組み替え、全く別のTDL流の杵渕作品に作り変えていた。

舞台装置は根暗に比べ、TDLは極シンプル。手作りの紙製の箱型劇場を使っての人形劇で、近年TDLが実施している半朗読スタイルの作品である。思えば、僕が前に見た落下箱もこの形を取っていた。
設定は、田舎の工場のコンテナを改造した集合住宅にて、どこからか落下してきた役人・元恋人の足跡を辿って流れ着いた女・コンテナに住む社員の3 人、が変なきっかけで出会って奇妙な会話を繰り広げる、という所までは変わらない。が、だんだん構成が既成の台本から逸脱し、後半で使われるはずの台詞が 前倒しで出てきたり、TDLのオリジナルキャラが出てきたり、社員(りんご)の家族が食べられたり、と、だんだんと杵渕世界がTDLワールドに犯されてい く様を見せ付けられた。

繰り返しになるが、TDLの落下箱は非常にシンプルに作られており、「物語よりも、脚本の言葉そのものに、感じ入って欲しい。」との吉田良の弁の 通り、所々TDL流のコミカルな演出が挟まれながらも、言葉をじっくり聞かせる朗読形式に徹していた。そこでボソボソと交わされる登場人物の会話は、唐突 なイメージの連続で成り立っていて、それ自体が幽玄な味わいを持っている。恐らく、原作者の次に落下箱を知る吉田良が作り出そうとした作品は、原作の意図 に沿ったものだったのだろう。根暗がSF的に物語の解釈を広げたのに対して、TDLは、本当にシンプルで奇妙な会話劇に仕上げていた。素朴で不思議な味わ いに満ちていた作品だった。今にして思うと、僕が数年前に見て一発で惚れたこの作品が、雰囲気もそのままに再現されていたものだった。

物語の最後。役人(くまのぬいぐるみ。ちなみに、女は舞妓人形である。)が、観客の手によって頭上を運ばれていき、水平に落下しながら、幕を閉じ た。TDLの落下箱は、あっけないくらいにスパッと終わった。脚本の構成をかなり削ってコンパクトに仕上げており、60分弱で終わってしまったのだっ た。(根暗は伸びに伸びて、結局1時間45分もの長尺の作品になってしまったのに)

土曜日の公演は、根暗とTDLの違いがはっきり出た日となって楽しかった。その中でも、両作品の脚本解釈の違い。その妙味がちゃんとした形で味わ えるのは、共同企画者だけの特権、旨みであろう。それをたっぷりと堪能した。個人的な感想になってしまうが、TDLと根暗のスタンスの違いが見事に出てい て、とてもエキサイティングな気持ちになった。



TDL おまえにある

かつて、上演した際に、右翼から警告を受けたと言ういわくつきの作品。途方もなく奥行きのある作品だった。

物語はこれまたシンプルな二人の会話劇の体裁を取っている。徴兵制がなんとなく残っている架空の現代日本。主人公は徴兵制から逃れ、山奥の温泉宿にたどり着く。そこへ追い掛けてくる政府の役人。しかし役人自身は純粋な日本人でないのだった…

結構、直裁的に天皇や戦争、民族の誇りなどをキーワードに使っていた事によって、おそらく問題に発展してしまったのだろうが、その実、物語のテー マはそこからさらに一歩進んで、人間の根源的な疑問・問題に踏み込んでいる。民族とは何か?日本人とは何か?この国の歴史や風土を熟知してるつもりの我々 で持ってしても、上手く規定できないその大きすぎる疑問に真っ向から挑んでいる脚本であった。その方便としての、この設定を用いたのだと思うのだが・・・

しかしテーマ性もさることながら、この様な難しい脚本に真っ向から一人芝居で挑むTDLの悪戦苦闘ぶりが伺える舞台であった。
何故かと言うと、物語としての難解さが尋常ではなかったからだ。基本的に登場人物は二人なのだが、二人が交わすのはほとんど日常会話のみなので、 核心のところをボカシたまま物語は進行していく。さらには、ストーリーテリングの難解さに加え、いつもの杵渕節とでも言える、唐突なキャラクター・独白・ 空間の混入!これにより、観客の頭はシェイクされ、遂には右も左も分からない状態にまで、観客の脳は未知の場所へ連れて行かれる。僕はビデオ撮影を担当し ていて、恐らくあの客席の中でも相当集中力を使ってあの舞台を見ていた人間だったと思うのだが、それでも、しんどい瞬間はいくつかあった。客席の雰囲気も 決してよいものではなかった様に思う。とても一回観ただけで理解できる代物ではなかった(そこが杵渕作品のいいところでもあり、悪いところでもある)

結局は、後半に、ようやく物語の核心となるシーンがいくつか出てきて持ち直したものの、難解な印象は特に変わらなかった。このまま脚本通りに終 わったら、「なんだか難解な芝居だったなあ、眠かったなあ」ぐらいの感想で終わってしまっていただろう。しかし、ここからがTDLの本領の発揮のしどころ だった。
舞台はクライマックスを終えて、これから場面転換の為に暗転になるだろうな、という観客の予想を裏切り、薄暗く客席の照明が灯り、TDLが客席 に座り込み、訥々と今回の芝居を演じての極私的な感想を述べていったのだ。自分のこれまでの人生における「戦争体験」。身近な親戚・知人による「戦争体 験」。そこから浮かび上がる、自分の中に流れる日本民族の血とはなにか?という疑問。その所感を静かに述べた後、TDLは舞台に戻り、物語は夢オチで唐突 に終わった。

元々観客にとても近いポジションで芝居を打ち、その観客席と舞台の境界について、これまで自身の作品で度々取り上げて思考していったTDLだからこそできた、この離れ技。難解だった物語が一気に観客の元へ近づいていった瞬間であった。
どんなに、独りよがりでオタクでグロテスクで個人的なものでも、舞台上に上げて、その題材を観客に近づける。そういった、まさにTDLの真骨頂が見れた、素晴らしい舞台であった。
そして舞台は静かに幕を下ろし、観客は各々考え顔で劇場を後にしていったのだった。




TDL  失恋 A GO!GO!

本企画の千秋楽。最後の最後に上演された作品。
失恋したマリ子を励ますためにマリ子の部屋に集まる、マリ子の双子の妹とマリ子の友人三人。だが待てどもいっこうにマリ子は帰宅してこない…というちょっとゴドーを待ちながら的な作品。女性五人の会話劇をTDLが一人芝居で演じる。

杵渕作品の中では珍しく、別次元への跳躍が「少ない」作品(ないわけではないよ)で、物語の90パーセントは、前述した五人の女性の会話劇で構成されている。
この5人の女性のキャラ分けに相当苦心したようで、無理矢理ジェスチャーで見分けさせたり、半ば強引にTDLお得意のキャラ、美輪明宏を使ったりもして、なんとか演じ分けていた。

TDLの一連の女装芝居の集大成とも言える内容で、半朗読スタイルの「落下箱」、淡々とした二人芝居の「おまえにある」、と比べると、かつての吉 田ミサイルの世界を髣髴とさせる、大所帯のにぎやかな一人芝居群像劇。女性同士の丁々発止のやりとりが楽しめる内容。・・・だったのだ。途中までは。

物語も後半にさしかかり、会話劇が一転、別次元に跳躍し、今までの秩序ある舞台が一端、崩れた。しかし、その間隙を縫って、TDLは打って出た。それまで静かに研ぎ澄ましていた牙を、一気に解放させたのだ。
いきなり、全世界中の男が出てきて五人の女を取り囲み始めたのだ。ん、杵渕さんはこんなテイストの話を書くか?と疑問に思ったのも束の間、舞台上 では男陣営を女陣営に別れ、最終戦争を勃発せんと一触即発の雰囲気に呑まれていった。ん、これはもしや・・・と思った次の瞬間・・・「な、と、東と西のド イツが合体していく!・・・合併したー!!・・・・必殺ドフトエフスキー!!!!」と、叫び放ったのだ!
わ。コレ完全にTDLオリジナルパートだっ!!!!!
TDLのオリジナルキャラ、Dr.カルパッチョが出てきたり、根暗の出演者おらんだのものまねをし出すわ、ビームを出したり、エモノを持ち出したり、と、もうやりたい放題!!今までの抑制の効いた舞台メイキングを全てかなぐり捨てるようなこの暴挙!!爽快であった。
そして・・・とうとう、原作には出てこないキャラ、物語の渦中の人物マリコがウェディングドレスを身にまとって姿を現した!!マリコは圧倒的な力 で男どもをなぎ倒し、最後に客席に大見得を切り、言い放った。  「失恋!A!GO!GO〜〜〜!!!!!!」と。その瞬間に巻き起こる万雷の拍手!! まだ、話終わってないのに!客席が間違いなく一体となった瞬間だった。カメラを握る僕の手も自然と熱くなったのであった。

結果的に、その後静かに舞台は幕を閉じたのだが、このマリコの登場するくだりがあまりにインパクトが強い舞台だった。3演目の中で最もTDLらしい作品だった。




以上、長くなりましたが、根暗とTDLの作品解説を終わります。
吉田良が意図してやったのかどうかは定かではないけど、3演目とも杵渕宙樹の作品を使っていながらも、それぞれの作品でTDLのスタイルに上手く 引き込んだ事が、印象に残った。根暗が作品の周りの外堀を埋めていってから、様々な装飾で城壁を、作品を作っていったのならば、TDLは、作品そのものを 自分の中に引っ張り込んで咀嚼して、吐き出した。そんな違いが出た企画だったと思う。
同じ脚本家で芝居を打つという、共同企画をやる意義が十分に引き出せて、嬉しく思う。また、違った脚本家で、こういう企画やってみたいのう。またおもしろい脚本探さなきゃな。

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