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  • 2014.11.04 Tuesday
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雨をみたかい?

宮崎駿の新作、「風立ちぬ」みた。
今まで見た事ない様なとんでもない作品だった〜〜〜〜〜〜!!
齢70にして新境地というか、ここまで瑞々しい作品を作り出す事が出来るなんて!!
 



しかし、この作品の面白さ―――というよりかは【凄味】という方が感覚としては近いんだけど―――は、非常に分かりにくい。何故かというと、エンタメとしてのカタルシスを半ば放棄しているからだ。
 
通常の活劇やロマンスものだと、主人公の挫折など、なにかしらビターな要素を物語に盛り込むのがセオリーだ。
単純な話、下がってから上がった方が気持ちいいからッショ!!って事だ。
そこも含め、観客が前向きに清清しいキモチになる為には、作中の人物がなにかしら挫折と成長を経験した方が効果的だし、物語への没入度も違ってくるのだろう。

しかし、この作品にはそういった苦味のある描写がまるでない。戦時中の話で、あまつさえ戦闘機の設計技師の話なのに、戦争の描写すら希薄なのだ。(どちらかと言うと、震災描写や街にはびこる不況の影の方がクローズアップされてるのが興味深い)

さらに付け加えるならば、
本作の2枚看板は、飛行機と恋愛だ。少なくとも、宣伝の段階ではその様に喧伝されている。だが、その恋愛さえも、本作はサラッと流しで描かれる。
恋愛に付随するドキドキ感はかろうじて描かれてるけど、恋愛における理想と現実のギャップやら、恋人がいる事のメンドクササ、ましてやサナトリウムものには必須の病状の彼女を慮る切実さ、etc,etc・・・
恋愛にまつわるこれらの要素はほとんど、作中ではオミットされております。

しかしながら、同時に、恋愛の中での美しい部分は過剰にクローズアップして描かれます。
避暑地での出会いから始まって、結婚に至るまでの菜穂子と二郎のやり取りは全てが美しく、僕はウットリとしながら、画面に釘づけになった。
サナトリウムを抜け出して、病状を押しながらも仕事に没頭する二郎に寄り添う菜穂子の儚い姿。これにも日本的な陶酔美がある。

ここには、我儘を言って二郎を困らせる女もいなければ、飛行機作りを阻む現実の蹉跌がある訳でもない。現実に蔓延る、不穏の影(震災、不況、そして戦争など)も全て二郎のそばをフッと通り過ぎるだけだ。

この事からも分かる通り、この物語には圧倒的に「苦味」が欠落しているのだ。



何故なら、それは二郎の【夢】だからだ。
これらは全て二郎が見ている都合のいい【夢】でしかないのだ。
それも寝てる時に見る夢と、現実の中で未来を思う夢には、劇中ではシームレスに繋がっていて、あえて区別をつけにくい様に描写されている。そこも興味深い。
これは妄想の域を出ない考えでもあるが、もしかしたらこの物語は、冒頭で幼少時代の二郎が見ている夢が、そのまま終盤まで続いてるだけなのかもしれない。二郎の飛行機技師としての活躍と菜穂子との恋も全ては夢幻なのかもしれない。
そういった拡大解釈を誘発してしまうほど、この作品は悪い意味でドリーミーなのだ。

だから、これはエンタメ作品などでは断じてない。ただの、【夢】の話だ。そして、夢に奉仕する男の才能の残酷さを切り取った、鬼畜クリエイター絵巻でもある。



さて、ことほど左様に、執拗に描かれる主人公堀越ニ郎の夢とは一体何だろうか?
それは【カッチョイイ飛行機を作って、飛ばしたあ〜〜〜〜い!!】とゆう夢。それしかない。
さっきから散々言ってるが、この作品にはその【夢】の描写しかなく、後の要素は瑣末なものとして、捨象されているのだ!
この二郎の人物設計を含め、この夢からは強烈にパヤオ本人の欲望が匂いたってくる。飛行機設計をそのままアニメ制作に置き換えれば、これはそのままパヤオストーリーとして成立してしまうのではないか??


要は、堀越二郎の夢=パヤオの見たいものオンリーしかこの世界にはない!!のだ!!!!
しかも、圧倒的なアニメ快楽を伴ってその世界が展開されるのだから、我々は道義的判断だとか、道徳的価値観だとかを早々に捨て去る事になってしまう。心地いい世界に没入してしまう。
だから、この作品を見てる最中はパヤオの映像マジックに酔い痴れていたけど、見終わった後のドラマ部分の事を思うと、その実、この映画では何も描かれていない事に気づき、戦々恐々とした訳なんですよ。

特に(ネタバレ全開になりますが)ラストシーン。これにはゾッとした。
そこには、苛烈な戦争の行方も、愛する女の生死よりも、夢の顛末と、二郎の師でありメフィストフェレス的な存在である、ジャン・カプローニとの会話しか描かれない。二郎はとうとう夢を見続けたまま、現実を一切顧みる事無く、物語の幕が降りる。
この他人を吐き捨てる圧倒的な鬼畜エンディングには、言葉が出ないほどに衝撃を覚えた。菜穂子とのやり取りの美しさで胸がいっぱいになってるのだけに、余計に・・・!


主人公、堀越二郎が夢を歩いてきた道程には、累々たる屍が横たわっている。
そこには、上司やライバル、さらには自らの半身たる最愛の人でさえも、等しく夢の為に切り捨て、自らの才能の為に奉仕させる、夢の鬼が見える。し かも、その鬼は微笑を絶やさず、穏やかに前しか向いていない。自分の前を通り過ぎて行った者に対しては後ろを振り返る事もない。何の感慨もないからだ。

こ、これこそ真性のキ印・・・!本物の天才がその巨大な才能を何の良心や道徳の呵責もなく行使すると、こんな地獄絵巻が出来上がる!とゆう・・・全くもって恐ろしい怪物を描写しているのだ!!



だが、この作品がそういった天才の傲慢を描き、断罪する作品でないのも、この作品の凄みをとなっている。(ちなみに、この作品をパヤオのライバル・高畑勲が描いたら、そうゆうテイストの話になっていただろう)

逆に、パヤオはそういったクリエイターの業を全面肯定し、さらには、前作「ポニョ」で見せたアニメ的な全能感で包んだ作品になっていると、僕は感じた。

前作の「崖の上のポニョ」では、子供向けファンタジーをいい事に、自らの創作衝動を、つまり幼児性溢れる全能感を丸出しにし、倫理観やストーリーテリングを半ば放棄した格好だったが、今作は舞台設定にファンタジー要素が入り込まない分だけ、タチが悪い。
要は、現実的な要請やしがらみをどれだけ無視できるのか?どれだけ、才能の為にそれらを犠牲に出来るのか?という話を、どうやって作品として正当化するのか?という事に、手法をシフトさせたからだ。

そこで選ばれたのが、【夢】だ。
【夢】という美麗字句を隠れ蓑に、「風立ちぬ」は「ポニョ」でみせた全能感を鮮やかに展開してみせた。
作中に漲る瑞々しさは、こういったパヤオの全能感が形を変えて作品に漲っているからなのではないか?


僕は、良く言えばクリエイターの業・・・悪く言えばクリエイターの傲慢丸出しの作品が大好きだ。
そして、優れた資質を持つクリエイターは巨大な才能の持つ者の残酷さに自覚的であり、それが幾多のフィクションで魅力的に描かれてきた。

例えば、格闘マンガ「刃牙」を代表作に持つ板垣恵介センセは、自らの作品では絶えず、「ワガママを貫き通す者こそ、最強だ」と主張し続けている。
はたまた、昨今の宇宙開発もの人気の先鞭をつけた傑作SFマンガ「プラネテス」に於いても、宇宙船エンジンの実験で爆発が起き、大量の犠牲者が出ても、シレっと開発を続けているエンジニアの姿を悪魔的な魅力で描写していたり、、、(あ、どっちもマンガだったwww)

そこに来て、日本、いやさ、世界最高峰の才能を持つパヤオが、こういった題材を真正面から取り組むといったら、あーた。。。
面白くなるに決まってる!!!!!!!!


さらにはこういった、真正ド鬼畜な才能残酷ストーリーが、あたかも夢と愛に生きた男の一代記みたいな、清純テイストにカモフラージュされているのが、痛快でならない!!
鈴木敏夫の宣伝効果の妙もあるのだろうけど、パヤオもようやく年相応の老獪さを身に付けたに違いない。「もののけ姫」や「千と千尋」ではどこかいびつだったテーマと活劇性の融合が、「風立ちぬ」においてはすんなりとハマっている!パヤオは齢70にして、さらなる円熟期を迎えているのかもしれない。


んで、もはやパヤオはどんな題材を描いても、許されるポジションにいる。圧倒的な商業的成功が背景にあるからだ。

だから・・・パヤオは自らの命尽きるまで、もっともっと自分勝手な作品を作り続けて欲しい。もっとおじいちゃんのキ印全開の作品を描いて欲しい〜〜〜〜〜〜〜っ!と、思うんだな。
自らの弟子である、庵野に主役を任せているという事。
これはあたかもパヤオから庵野へクリエイターのバトンを渡している様に見えるが、それよりも師匠のデッカイ背中を弟子に見せたい!弟子に「スゲー!!」って言われたい!
という自分勝手で稚気に溢れた動機なんじゃないかなーと僕は思えてしまうんですよ。

パヤオの、ド本気。「風立ちぬ」。
まだ1回見ただけでは、とても全貌がつかめぬ。今月中にもっかいは見に行こうかと思う。



あ、
やたら評判の悪い庵野の演技は個人的にはそこまで嫌ではなかったけど、さすがに主役として持たせるにはちょっと奇を衒い過ぎた抜擢だったなあ〜と思った。
庵野の台本棒読み自体には、声質も相まって非常に味が出ていたけど、脚本はその味を生かす方向には全く開かれていなくて、違和感があった。
特にね、堀越二郎は作中で朴訥みたいなキャラ廻りでいる割には、歯の浮く様なキザなセリフばっか言いやがるんだよなあ。これはキャラのイメージコントロールがあまり上手くいってない様に思われた。
 

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